Gallery Kawafune ギャラリー川船

鞍掛徳麿展
KURAKAKE TOKUMA Exihibition
2000年6月12日(月) - 24日(土)
11:00AM - 6:00PM 日曜日休廊

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追憶−坂崎乙郎氏 72.8x73cm 油彩・キャンバス
ものの気配を求めて
笹木繁男
私が鞍掛氏の作品と最初に出会ったのは、いつ頃のことであったろうか?
 たしか氏の作品が、安井賞展にノミネイトされた1970年前後であったと思われる。最初出会った鞍掛氏との話の中で、当時の安井賞展出品は坂崎乙郎氏の推薦によるものであったと打ち明けてくれたが、初めて聞く話であった。たまたま出掛けた、その安井賞展で、鞍掛氏の作品を見掛けて心に留め、その後(1972年)新宿の椿近代画廊で開催された安井賞作家小品展で、鞍掛氏の作品と再び出会うのである。
 会場に展示されていた小品は「フクロウ」と題された4号ほどのものであったが、きらびやかな他の作家の作品に比して、地味であるが魅力にあふれていて、思わず購入してしまったのである。
 当時私は、氏の画歴を全く知らず、面識もなかったが、作品が気に入って買い求めた、それだけのことであった。「フクロウ」と題されたその作品は、欝蒼と生い茂る、薄暗い樹間を思わせる背景の中から、鋭い嘴と眼差しで、観るものをじっと窺う、猛禽といった絵であった。こうした鳥類・動物などを主題として描く場合、色彩 などで装飾的に描くか、絵に感情を託すか、リアルに描くか、形象に工夫を凝らすかの場合が殆どであろう。
氏の場合は、その何れにも当たらない。どちらかといえば、ものの気配を絵画化するといった手法である。描かれた「ふくろう」の全体像は、色の滲みや、変形した形態と、異なる色彩 の輝きで構成された背景の中に同化し、包囲されて希薄となり混沌となるが、実態の不確実さ、曖昧さが何時の間にか現実となって観るものに迫り、観るものを釘付けにする。寡黙な中に、描くものの気迫と、ひたむきさが直接感じられるのである。
時流を追わず、コレクターに媚びず、ひたすら自己の世界に沈潜し、画面も暗く沈殿して、一見救いがないが、丹念な気配りで配色された色彩 は底光りを放ち、対する者を感動に誘う。
 私が鞍掛氏の「フクロウ」に出会ったのを最後に、その後の氏の消息を知る由もなく、また作品と出会う機会もないまま、二十数年が過ぎることとなったのである。昨年、偶然、某画廊主に鞍掛氏を紹介され、私の手元にある氏の制作になる「フクロウ」を、いつも心の片隅で気にかけていただけに、初めての面 識にもかかわらず、永年の知己のごとく感じられたのである。
 氏の話によれば、坂崎氏との出会いの後に、現代画廊の洲之内氏と出会い、作品発表の機会もあったようであるが、何分寡作の作家であり、
発表の機会を自ら作り出すこともないまま、人目に触れず今日に至ったようである。私も氏の消息を掴めないまま、ろくな調査もせず、すっかり過去の人と決め込んでいたのも、こうした理由によるものであった。氏の年齢が、私と一つ違いと知ってさらに驚いたのである。
 このたびの個展は、画廊主とも相談の上の、自薦展に類した展覧会とのことで、氏の画業の軌跡が一望できるわけで、私にとっても初めての又とない機会であり、今から楽しみにしているところである。

(ささき しげお 現代美術資料センター主宰)

 
鞍掛徳麿 略歴
1930 広島県比婆郡比和町に生まれる
1954 日本大学芸術学部美術科卒 吉岡憲に師事

《個展・グループ展・その他》
1954 独立美術展に初入選 ’70年頃まで出品
1970 安井賞候補新人展 ’71、’72年同展出品
1972 紀伊国屋画廊12人展
1973 新鋭選抜展・日本橋三越 ’74年同展出品
     紀伊国屋画廊5人展 ’74年同展出品
1974 現代日本選抜展・栃木県立美術館・出品収蔵
1977 安井賞候補新人展 ’78年同展出品
1991 早稲田大学演劇博物館・出品収蔵
2000 広島県・三良坂平和美術館・出品収蔵

《個展》
1968 ピカソ画廊(広島市)
1971 紀伊国屋画廊 シリーズ展(5)(新宿)
1975 ギャラリーヤエス(八重洲)
1976 現代画廊(銀座)
1991 紀伊国屋画廊 シリーズ展(21)(新宿)
1997 ギャラリーミハラヤ(銀座)
1999 湯布院美術館(大分)
モノクロ画像 上より
婦人デッサン 1955 35.5x24cm コンテ
子鷹 22.8x16cm 油彩・キャンバス
吉岡憲 肖像 45.5x33.3cm 油彩・キャンバス


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