Gallery Kawafune ギャラリー川船


Lee Bae (イー・ベー)
2005年4月4日(月) - 4月23日(土)
11:00-19:00
日・祭日休廊

アクリル・布 H91.0×W72.7cm(30F) 2004

 

  Lee Bae の[黒]
イー・ベーはたえず反復した ― パリに暮らして15年近くになるのに、彼は祖国韓国の文化に結びついている。若い頃から刻み込まれ、常に心に抱き、現在、頻繁に祖国を旅する際に再発見する文化。彼が習っていた書道、風景を支配している数多くの山々、これらふたつの様相に固有の、形と生命力によって、そして黒によって、彼はこの文化を常に特徴づけた。
芸術家になって以来、イー・ベーはこれらの刻み込まれたものを、彼の造形的な思考の中心においた。このことから彼は数年来、木炭を使って仕事をするようになった。灰まで使い尽くすため、そして全ての造形的手段を引き出すために、彼はあらゆる視点から、そしてあらゆる特徴において、木炭に向かって行った。したがって、当然、彼の仕事の過程はその素材に関しての、そしてその素材を使っての多量な仕事によって活気付いている、とよく言われた。しかし、これは何よりも全ての構想における仕事、究極の探求―黒の探求においてのことであった。
木炭を消費し、使い尽くした後に、イー・ベーは新たな素材と新たな技術を求めて出発した。そして2年前から、彼のカンバスは、もちろんその主題を変えることなく、変化した。
この一連の作品に、イー・ベーは、多くの気配り、正確さ、洗練をもって、さまざまな媒材とともにアクリル塗料を用いて仕事をした。出来上がったこれらの作品は、見る者に問いかけ、驚くべき感覚に陥れる。どのように制作するのかという質問は、確かに即、彼の意志に達する。制作の詳細には深入りしないが、イー・ベーは、できる限り滑らかにするために、スケッパーで白い塗料を塗り重ねた生のカンバスから出発する。この下地の上に、彼は墨の黒いアクリル塗料で(いつも)形を描く。それから彼は表面全体に厚い媒材を塗るのだが、これは透明で、まず光る効果を与える。次に彼は黒い形に立ち戻り、そしてようやく、最後にマットで、滑らかで、穏やかな、そしてパラフィンのようなベージュの表面を作り出すために、他のもうひとつの媒材の何層かで全てを覆う。
もし芸術家の厨房(注)が、一般的に、殆ど面白みを持たないにしても、素材との戯れがイー・ベーにとって作品の基本的な鍵となる要素であるという理由からだけでなく、それはここでは重要さを持つ。しかし特に、使われている技術が、ここで、黒い形から生まれたこの強い感覚を創造するために必要な、そして同時にその黒い形が位置する白―クリームの空間に関して、緩慢さの、相次ぐ覆いの、透明さの、深さの概念に基づいたプロセスのアイデアを本当にもたらすからである。
象徴的でも、表徴的でもなく、これらの黒い形はそれぞれ、それ自身以外のものには付託しない。実在の構造なしに、動作の意図なしに、この黒い形はただ置かれていて、空間につるされている。ただ単に、抽象的な形、物体、黒を凝縮するのに適した塊りが重要なのだ。
イー・ベーはこの形について、予め紙の上に墨で練習している。この目を引く明白さ、この的確さ、黒をあおりたて生き生きとさせるこのバランスを形にもたらすために、彼はそれらを見つけるため、それらを出来る限り最も効果的にするため、それが長いアプローチの結果であるとしても、最初の素直な一目でこの様相を与えるため、実際、数多くのデッサンを描く。ここには偶然はない。形は、それが調和を見出すように、絵の空間で自身の場所を中心に取るように、形を包み込み、絶え間なく対話をしている下地と釣り合いを取るように、細心に念を入れて作られ、考えられている。なぜなら、これは何よりも明らかに、黒い大陸が現れるこのふたつの色、あるいは色ではないものの対照だからである。
このぼんやりした境界 ―白の透明さの中にある周縁の軽い反射の仕業― から、黒が浮かび上がり、振動する。だからもう黒い物体、この非常な緊張の塊り、光と我々の視線を吸い込む信じられない密度の塊りとしか見えないのだ。各自が望む深さをそれぞれに見つける、底のない黒い井戸のように。ここでは、自身に収縮するこの黒、永遠にまで黒の中に入り込むこの黒に倣って、物質があまりにも密になり内破してしまう、宇宙物理学のブラックホールのように。

(注)唐突に[厨房]という言葉が出現するが、イー・ベーにとっては、アトリエで様々作業する行為の目的性、時間性、創造性のミックスされた濃密な過程を、あたかも一流シェフが精魂傾ける[厨房]におけるそれと同質のものと感じているフシがある。

アンリ フランソワ・ドゥバイユー/美術評論家(翻訳 中川協子)


アクリル・布 H146.0×W114.0cm(80F) 2003

アクリル・布 H91.0×W72.7cm(30F) 2005

アクリル・布 H91.0×W72.7cm(30F) 2004

アクリル・布 H72.7×W60.6cm(20F) 2003

アクリル・布 H53.0×W45.5cm(10F) 2004

アクリル・布 H46.5×W39.0cm(8F) 2004

アクリル・布 H46.5×W39.0cm(8F) 2004

 

李英培 [イー・ベー]
Lee Bae

1956  韓国・慶尚北道の清道(チョンド)に生れる
1979  弘益大学西洋画家卒業
1990  この年以来、パリ在住

個展
1982  寛勲美術館(ソウル)
1983  樹画廊(ソウル)
1986  キュンギン画廊(ソウル)
1988  樹画廊(ソウル)
1991  エスパス・バトー・ラボワール(パリ)
1993  エスパス・アルスナル、イッシー・レ・ムーリノー(パリ)
1994  ベルフォア画廊(パリ)
1995  シーゴン画廊(テグ)
1996  セオミ画廊(ソウル)
      ウィリー・デュセ画廊(ブリュッセル)
1997  シーゴン画廊(テグ)
1998  ガナ・ボーブール画廊(パリ)
1999  ゴンガン画廊(プサン)
      シーゴン画廊(テグ)
      ソウル現代美術フェア[ガナ画廊](ソウル)
2000  韓国国立現代美術館(ソウル)
      シーゴン画廊(テグ)
      ガナ画廊(ソウル)
      ゴンガン画廊(プサン)
2003  ジョヒュン画廊(プサン)
      シーゴン画廊(テグ)
2004  FIAC(国際現代美術フェア)[シーゴン画廊](パリ)

グループ展
1977  グループ77第2回展[ソウル画廊](ソウル)
1978  アンデパンダン展[韓国国立現代美術館](ソウル)
1982  韓国現代絵画への考察・3人の若い画家[寛勲美術館](ソウル)
1983  現代版画展[ソウル・アートセンター](ソウル)
1987  高低[パク・ソン画廊](ソウル)
      若手作家展[韓国国立現代美術館](カチョン)
      異端者[韓国文化センター](パリ)
      現代絵画とプリミチィブ[パク・ソン画廊](ソウル)
1988  現代韓国絵画への眼差し[アルベール・シャノ造形センター](クラマール)
1991  ヨーロッパ・ファクトリー[現代美術センター](パンタン)
      若手作家展[韓国文化センター](パリ)
1992  ヌーベル・ブラック[韓国文化センター](パリ)
      パリ・ラバ[クワック・ウォン美術館](パリ)
1993  韓国作家3人展[ベルフォア画廊](パリ)
      南の絵画ビエンナーレ92[韓国文化センター](パリ)
1994  ‘94テグ・ワークショップ[シーゴン画廊、シーラ画廊](テグ)
      エスパス・アルスナル・パリ・オープニング展(パリ)
1995  開かれた門[アトリエ・アルスナル、イッシー・レ・ムーリノー](パリ)
1996  SIAF(ソウル国際美術展)[シーゴン画廊・COEX](ソウル)
      “21世紀のビジョンのために”[COEX](ソウル)
      韓国現代アート‘90の状況 [東京国立近代美術館] (東京)
      韓国現代アート‘90の状況 [国立国際美術館](大阪)
      白と黒 [セオミ画廊](ソウル)
      ひとつの場所、七つのエスパス、マニュファクチュール デ ウィエ、イヴリー
ケルン見本市 [アリチ−パリ画廊](ドイツ)
1997  FIAC(国際現代美術フェア)[シーゴン画廊](パリ)
      アンデパンダン展[東京都現代美術館](東京)
1998  FIAC[シーゴン画廊](パリ)
      ニューヨーク国際アートフェア[N.Y.コンベンション センター](N.Y.)
1999  ベルリン−ソウル[コミュナル画廊](ベルリン)
2001  FIAC[シーゴン画廊](パリ)
2003  FIAC[シーゴン画廊](パリ)
2004  KIAF(韓国国際アートフェアー)[シーゴン画廊・COEX](ソウル)

東京国立近代美術館、国立国際美術館[韓国現代アート‘90の状況]カタログ参照
協力:中川協子

展覧会協力:CI-GONG Gallery


mail to kawafune@diamond.broba.cc

戻る/RETURN